悩める「メガネ難民」を救え!第一回 安いメガネは買っていいの?

悩めるメガネ難民を救え!

第一回 安いメガネは買っていいの?

「似合うメガネが見つからない」「安いメガネは買っていいの?」「どこで買えば……」。最近、自分に合ったメガネが見つからない「メガネ難民」が増えています。そんな迷える「メガネ難民」を救うため、メガネライターの藤井たかのが、素朴な疑問にホンネで答えます! 第1回のテーマは「安いメガネは買っても良いの?」。……ホントに良く聞かれます、コレ。

安いメガネは“部屋着感覚”で使うならアリ!?

今やメガネは「フレーム+レンズ」で、5000円前後で買うことができる時代になりました。かたや、セレクトショップや専門店で扱っているブランドのメガネは、フレームが3万円前後でレンズが3万円と、6万円オーバーはざらの世界。ヘタすりゃ10倍近く値段が違うわけですよ。

例えば、下の写真は僕の私物。4000円代〜4万円弱まで揃っています。さて、いちばん安いメガネはどれでしょう? わかんないですよね、そもそもモノクロだし。

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で、話は戻りますが、「安いメガネを買ってもいいの?」という話。これは「ユニクロを買ってもいいの?」「吉野家で食べてもいいの?」という質問と似ています。もちろん、買いたければ買っていいのですが、価値を理解してから買うのがベターです。僕自身、少し前にJINSのメガネを自宅用として使っていました。レンズ込みで9900円は非常に安く、なにより魅力は「安いから気を使わなくていい」こと。寝起きでうっかり踏んでも気にならないし、2歳の娘が汚れた手でビヨンビヨン引っ張っても笑っていられます。実際に使って、鼻が少し痛かったことを除けば、日常ではさほど不都合はなし。……なのですが、1年でテンプルが外れました(!)。まぁ、子どもが雑に扱ったせいなので、普通に使えばもっと長持ちするはずです。

というところで、安いメガネはユニクロのように“部屋着感覚”で使うなら、非常にコスパが高い。とはいえ、ここ数年は「メガネ=安い物」が主流になり過ぎていると、メガネライターとしては思うのです。ぶっちゃけ、バランスが悪い。

例えば、新入社員のときは安いスーツや鞄で働いていても、社会人になって数年が経てば、身に纏うアイテムは徐々にランクアップしてきますよね。でも、なぜかメガネだけは、“安いママ”でいってしまう人が多い。スーツや靴、鞄にはうん10万円かけて、インテリアや食事など、ライフスタイル全般にもお金をかけるのに、「メガネだけ安い」っていう人は案外いるのです。これ、マジで謎なんです……。

値段の違いは質感やパーツに差が現れる。

そもそも、安いメガネと高いメガネの違いはなんだと思います?

今回は見た目の話が中心ですが、まず質感を見てみましょう。いま3プライスや量販店のプラスチック系フレームの多くは、「インジェクション」という製法で作られています。これは射出成形とも呼ばれる加工法で、プラスチック樹脂を型に流してメガネを作るというもの。型に樹脂を流し込むから、安くて圴一なメガネを大量生産できます。個人的には、質感がテカテカのツルツルでチープかなと。あと、大半のインジェクションメガネは曲がらないので、フィッティングがしにくいのも特徴です。

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こちらが安いインジェクションのメガネ

対して、高いメガネのプラスチック系フレームはアセテートなどのプラスチックの板材を削ったものが主流。アセテートは自然素材のパルプなどが原料で、加工がしやすく、美しい発色や柄を出せるのが特徴です。温めると曲がるので、フィッティングがしやすい点でもメガネ素材としては優秀です。製法としては、アセテートの板材をメガネの形にカットして、職人が手ヤスりをかけたり、手磨きしたりすることで、滑らかなラインや高級感のある光沢を表現しています。

とはいえ、安いメガネの全部がインジェクションではなく、最近は量販店でもクラシックなシリーズでアセートなどを使っているケースが増えています。

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高いアセテートのメガネ。

続いてはパーツ。特にフロントとテンプルをつなぐ「ちょうつがい」のヒンジに大きな差が出ます。安いメガネのヒンジは「これで大丈夫か?」と見ていて、不安になるほどチープなものがあります。高いメガネのヒンジは埋め込み式が多く、見るからに堅牢です。見た目の話だけでなく、ヒンジはメガネの開閉を担っているため、掛け心地や耐久性を左右するとっても重要なパーツなんです。

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安いメガネと高いメガネのヒンジ

ただし、いまは安いメガネもバリエが増えています。先に紹介した安っぽいヒンジは5000円前後のリーズナブルなラインで使われていて、1万円前後の高額ラインには埋め込み式のヒンジを使っている、なんてケースもあるんです。ちなみに私物のテンプルが取れたメガネもこの安っぽいタイプのヒンジでした。安いメガネを買うときは、ぜひヒンジをチェックしてみて。「頼りねぇな〜」と感じたものは、たぶん頼りないです。

あと、細かいところでカッティングも重要です。フロントを上から見たときに、安いメガネは厚みが圴一。高いメガネは中央にかけてほんの少し薄くなっています。ミリ単位の厚みの違いですが、実はこれによってフロントの強度を保ちつつ、少しだけ軽量化しているんです。

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ちょっと分かりにくいけど、安いメガネは厚みが均等で、高いメガネは中央が薄くカットされている

ついでに、こちらは上野で見つけたトム フォードのバッタもん。ちゃっかりTアイコンも再現されていて、まさかの税込み1000円(!)。

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トム フォードのバッタもん。Tアイコンを再現するもガタガタ……

値札には「ファッション用グラス」と明記されていますが、これは消費者庁の定める家庭用品品質表示によるもの。実はこの「ファッション用グラス」は、視力補正用ではなく、かつ、サングラスの企画を満たさないものとジャンル分けされています。つまり、「雑貨感覚」で売られている安いメガネで、本来の機能は期待できません。ネット通販などでやたらと安いメガネやサングラスは大半が、「ファッション用グラス」なのです。

400円と3200円のトンカツの違いとは?

話はドラスティックに展開しますが、大学時代に友人と「雑誌に載っている店に行ってみよう!」と3200円のトンカツを食べに行ったときのことです。当時、学食で400円の薄いトンカツばかり食べていた自分にとって、3200円のカツは完全に非日常。貴族の晩餐です。で、3200円のカツは確かにウマかった。「すわっ! これが3200円の味か!!」と大いに興奮したものです。とはいえ、僕が出した結論は「元も子もない」ものでした。

「3200円のトンカツは、400円のトンカツの“8倍ウマいわけではない”」

メガネも同じです。5000円のメガネより4万円のメガネの方が、素材の質感やパーツ、デザイン、耐久性など、あらゆる面で優れています。とはいえ、8倍も優れているわけではありません。

400円のトンカツでも栄養はとれるし、若ければぜんぜんOK。ってのと、同じように、安いメガネも多少の不具合があったとしても、日常的に使うことができます。かといって、いい大人が400円のトンカツしか食べたことがないってのは、侘しくないっスかね。

「安いメガネは買ってもいいの?」

僕の答えは3割イエス、7割ノーです。

“部屋着感覚”でわかって使うならアリだけど、それしか知らない人はちょい人生をソンしてます! できれば安いメガネも高いメガネも試してみて、両方を使い分けしたり、高いメガネにドハマりしたり、安いのばっかり買い倒したり。それぞれの違いを知ったうえで、自分にドンピシャなものを掛けてほしいのです!

で、最後に私物の価格の答えを。いちばん安いメガネは左中央でした〜。

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左下から時計回りに。「MOSCOT」2万7000円、通販で買った「ファッション用グラス」4900円、「JINS」7900円(レンズ込み)、「Zoff」9000円(レンズ込み)、「YELLOWS PLUS」2万7000円、「ayame for ponmegane」3万6000円。※価格は購入当時のもの。すべて税抜き

文・写真/藤井たかの
イラスト/鈴木麻子

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